(100) 消えた年金
えー、私は「絶対に自分は年金がもらえない世代」だと思っていますので、現時点での見込み額が多少上下しようがあまりピンときません。
そもそもが
社会保険庁:年金加入記録照会・年金見込額試算・年金個人情報提供サービス
で年金額簡易試算をしても、夫婦合わせて泣けてくるような額にしかなりませんし。
しかし払う額はけっこうデカく、自分に返るのはあきらめるとしてもせめて有用有効に使っていただけないものかなぁと。
ものかなぁと思っていたら、なんだ最近の国会審議は。
社保庁に年金の納付記録がなくって不当に低い額しかもらえていない/もらえない人がたくさんいるんだけどどーすんのよ、なんて話になっていて。
でもなんだか経緯もよくわかんないし、今や次回選挙の争点にされちゃっているので駆け引きが凄すぎて本質が見えてこなくて。
いえ、上の子(中1)が最近「大人の世界」に興味を持ちだし、先日「おとーさんどーなってんのこれ?」と聞かれたんですが。改めて聞かれてみると自分もあんまり把握してなくてわかりやすく説明することができなくって。
つことでちょっとそのへんを調べてみました。
まずここまで大きくなった問題の振り出しは、たぶん2006年6月、長妻昭衆議院議員の衆議院厚生労働委員会での発言。
ここで「支払ったはずの年金保険料の記録が消えて、未納にされてしまうというとんでもない事例」があることを指摘してますね。
長沼議員はもともと社会保険料や税金の不正使用/無駄遣いをいろいろ指摘してきていて、有名どころでは「高級外車」や「江角マキコ」問題の発信元だったりもします。
なるほど確かに「消えた年金」問題も言い出しそうな経歴だなぁと。
で、状況の概要としては、
- 現在社保庁には、のべ約3億人分の納付記録がある。
- そのうち約5000万人分の記録に、現在まで基礎年金番号を付与できていない。
(つまり、誰が払ったのか特定できていない)
ということなわけです。
もともと年金ってのは雇用形態によって加入先が異なります。共済組合(公務員、教職員、農林漁業)、厚生年金(民間企業の従業員)、国民年金(国民全員)ってとこでしょうか。私みたいな個人事業主は国民年金(基礎年金)のみですが、どっかに雇われている人には基礎年金+αの仕組みが用意されているんですね。
でもって、昔はこの年金保険者(保険料を受け取って管理する組織。払う方は被保険者)ごとに年金番号は別々に振られていたわけです。
で、どーなるかってぇと。
例えば私が会社を辞めてフリーになった際、厚生年金を抜けて国民年金に加入し直したんですが、昔の制度であれば年金番号が振り直されることになります。
てことは、私が払った期間を追っかけるには、途中までは厚生年金の番号、やめてからの分は国民年金の番号で探さないとならないわけで。
こらぁめんどくさいしわかりにくいし間違いやすいでしょ、ってんで、どの保険者に加入しようと抜けようと年金番号はその人トータルで1つ付番するようにしましょうよと。
これが基礎年金番号ですね。
基礎年金番号は1997年に実施されました。
で、何をやったかってぇと、まずそれぞれの保険者ごとにアクティブな被保険者の記録に付番しました。これが約1億人分。
次に、転職や離職などで保険者を渡り歩いた分の記録を、付番した記録に結びつけて1つの記録にまとめました。これが約1億5000万人分。これを名寄せ処理と言います。
トータルのべ2億5000万人分。
で、現時点まで残り5000万人分の記録が名寄せできないで宙に浮いちゃってる、ってのが現状ですね。
さて。では、なんで5000万人分ものデータが宙に浮いちゃってるのかと。
原因としてよく言われるのが「基礎年金番号用システムにデータを移行する際の入力ミス」なんですが、5000万件÷3億件≒16.7%。プログラム屋のハシクレとして、17%弱もの入力ミスをほっといて移行完了なんてのはどーにも理解できません。多すぎんじゃんなんぼなんでも。
ふつーに考えてこの手のシステムは「データが命」なんですから、絶対に入力後にきびしくチェックしますって。予算があればデュアルで入力して突合かけてもいいくらいの重要さですって。
それでもチェック漏れはあるでしょうが、感覚として「あーそのくらいはありそー」と思えるのはせいぜい0.1%とか。それでも30万件になっちゃいますけど。
じゃ残りは何よと。
どー考えても、入力の元資料がそもそも間違っていたとしか思えないんですね。
じゃ元資料は紙で、基礎年金番号の実施時に手入力かというとそんなこともなく。かなり以前から社保庁は基礎年金番号と無関係に電算化しているわけです。
年金時効分は非課税に、社保庁はずさん入力認める : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
「1980年代に年金納付記録を紙の台帳から電磁データに移行した際、台帳に記された振り仮名なしの漢字の氏名を、本人に読み方を確認せずにカタカナでコンピューターに入力していたことを公式に認めた」
んだそうで。もっと遡ると、
年金番号:64年に93万件不明 社保庁認識も対策取らず-今日の話題:MSN毎日インタラクティブ
「社会保険庁が1964年、厚生年金の年金番号などを磁気ファイルに入力する際に93万件の年金番号が誰のものか分からなくなり、注意を促す通知を自治体などに出していたことが分かった」
つことで、どうも昔からデータがいろんなきっかけで劣化していき、その積み重ねで今日に至る、みたいな感じですね。
ある意味、基礎年金番号で1本化したおかげで従来のデータの不備が明確になった、という面もありそうです。
もっとも被保険者側で加入時の書類記入に不備があった(生年月日を吉日に変えちゃう、氏名を通称で書いちゃうなど)ケースもあるようで。これはもうスタート時点から本人確認ができないデータになっているわけで。
さて、ここからがドタバタ。
予備知識として、与党、野党、社保庁、被害者側の認識と対応にざっと目を通していただけると。
年金 ご安心ください。(自民党)
あなたの年金大丈夫ですか?(民主党)
社会保険庁:年金記録への新対応策パッケージ(これも)
年金難民(6)重い腰を上げた社会保険庁
この浮いた分をどうしていたかというと、ほっておいたわけではないらしいんですが、社保庁内になんだか「あまりキツい仕事をさせてはならない」みたいな労働慣行があったらしく、なかなかはかどっていなかったようです。
そうこうしているうちに2002年、従来は自治体が担当していた国保の徴収業務が社保庁に移管されちゃったんですね。
で、業務がなくなっちゃった市町村サイドでは記録の保存義務もなくなっちゃったので捨てちゃった(ところもある)と。
こうなるともう元データがないので突合しようがない、らしいんですが、ほんとかなぁこれ。ふつー業務移管したら関係データも引き渡すでしょ。電子データで引き継いだけど元資料からの転記ミスをいまさらチェックできない状態になってしまったよ、ということなのかなぁ。
でも基礎年金番号システムが稼働してから2002年の段階ですでに5年経っているわけで。その間にいくらでもやりようがあっただろうと言われてもしかたがないペースではないかと。
まぁこのへんの経緯があって、野党は「省庁がぐずなのは内閣の舵取りの問題じゃん」、政府は「もともと基礎年金番号を導入した時の担当大臣は民主の菅さんじゃん、俺ら一所懸命ケツ拭いてんじゃんよー」みたいな言い合いになっていますよと。
このへん民主党の支持団体に社保庁の組合があるとかなんとかいろいろパワーバランスな駆け引きもあるらしく。意外と自民の社保庁民営化案、民主の歳入庁(社保庁+国税庁)案なんかも「民主の支持団体を守れ/崩せ」的な意味合いもあるのかもしれません。
で、これから。
社保庁が今後どーなるかはさておき、今回の「消えた年金」問題への対処としては。
とりあえず今現在60歳以上らしい(今受給を受けている、もうじき受ける)人のデータ2880万件分を優先してチェック、該当者っぽい人には来年の10月までに連絡すると。該当者っぽくない人にも再来年の3月までに加入履歴を送ると。60歳未満の人にも送ると。
いう話になってるっぽいです。社保庁の資料でもほ同じ情報がリリースされていますので、政府/行政としてはこの方向で行くことがほぼ決定だと思っていいんではないかと。
先日議会を見てたら「いったん1年で5000万件総チェックするっつったんだから吐いた唾飲むなやー」みたいな突っ込みをしていた議員がいたんですが、まー社保庁の従来の作業ペースを考えると1年半/2880万件でもよく飲ませたよなーと思いますよ私は。
とりあえずそれで判明する人はいいと。判明した人には5年の制限を特例で解除、今まで受給できなかった分を満額支払(しかも5年以上前の受給分には非課税)ということで、まぁ落としどころかと。
判明しなかった分のデータをどうするかの策がちょっと弱いかなー。
一応「有識者」で構成された組織を作ってヒアリングその他の作業で認定していくらしいんですが、生年月日も名前も違う人を認定するってどーすんでしょ。
なんせ今聞こえてきている情報だけでも最古の宙浮きデータは40年以上前のものですし、領収書その他の納付証明や勤務先からの証言なんかもまず無理でしょうし。
以上、走るだけ走って書いてみましたが、自分としては大まかに把握できたかなーというところですね。ふぅ。