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(89) それは怖いのではなく

仕事から帰ってくると、小六の長男が神妙な面持ちで、

「おとうさん、(小三の次男)が謝りたいことがあるんだって」

と言ってきました。
どうも次男は言い出す勇気を持てないと踏んで、相談を受けていた長男が口火を切ってやったようです。
なるほど。で本人に、どんな話なのかと聞いてみました。

ニンテンドーDSのソフトに「脳を鍛える大人のDSトレーニング」というのがあって。
その中に「名作音読」という、実際に画面に表示された文章を声を出して読んでページをめくるトレーニングがあって。
最後まで音読するのにかかる時間を計測するのだけれども、別にホントに音読したかどうかのチェック機能は付いていなくて。

次男は、読まずにどんどんめくったらどうなるのか?と試してみたようでした。
当然ものすごく高得点になるわけで、最高ランクの「ロケット級」が出てしまったそうです。

「ぼくは、こんなことになるとは思わなかったんだよ」

とぼろぼろ泣いています。長男も、

「いや、(次男)はちょっと試してみたかっただけで、
悪気はなかったんだよ」

と横から助け舟を。

…あーおまえら、それ、そんな泣きながら謝るようなことか?

と親父は内心思っちゃったんですが、本人全力で勇気を振り絞って告白しているわけですし、長男も必死でフォロー入れてきますし。

とりあえず、

「そうか、それは失敗したなあ」

としかつめらしい顔をして見せて。

「今度からそういうことをしない、と気をつけるなら、
おとうさんは、おまえを、ゆるす」

と言ってみました。本人もそれで何となくほっとしたようでした。


ようだったんですけれども、寝る段になったら次男が布団の中でまたぐっと涙を溜めてやがります。

まだ気になるのか、と聞いてみると、

「ぼくはやっぱり不安なんだよ。こわいんだよ」

何を怖がっているのかよくわからないままに話を聞き、明日おとうさんといっしょに件のデータを削除する、ということで安心してもらいました。

本人はそれで納得して寝たんですが、親父の方は次男の心情が掴みきれず、ちょっと考え込んでしまいました。

翌晩、

「よーし、じゃあデータ消せー。」

「えっ、ぼくがやるの?」

「自分でやっちゃったことは自分で決着つけないとなー」

「わかった、じゃあ見ててね」

とデータ抹消→新規に自分のデータをエントリー。
次男はほっとしたような、すっきりしたような。はればれと笑っておりましたよ。


ああそうか。あれは「後悔」だったんだ。

親に謝り、許してもらっても、しでかしてしまったことが気になっていつまでも嫌な気持ちのままでいることを、次男は懸命に自分の語彙の中から似たような感情を表す言葉で列挙していたんだ、と、後日ようやく思い至りました。

今までの自分の生活の中になかった複雑な感情まで持てるようになってきたんだなあと親父はしみじみとしましたよ。
幼いなりに自分なりに善悪の基準を持ち、不本意に「自分で許せない」ことをやってしまった時に、理屈ではなく感情で否定するだけの人格がきちんとできてきたのだなあと。

しかしゲームのデータで人生一大事なんだ。
親父はなんだか、人間のできあがる過程を教えてもらっているような気がします。

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コメント

同じ父親として、ほ~と思いました。
子供の成長を見れるいい機会だったわけですね。俺も近い将来そういう事にぶち当たるんだろうか。
親として少し楽しみですね。

それはそれとしてDSの機能、中途半端ですね・・・。こっちも成長してほしいもんだ(笑)。

> 俺も近い将来

お楽しみに。(^^)
うきゃ?さんとこは今まさにこれからですよね。うらやましいなー。

> DSの機能

「もっと」脳を鍛えるDSトレーニングに期待しましょう。

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